2017/02/06

リサ・ビンザントとビルベルギア ドミンゴス・マルティンス (Lisa Vinzant and Billbergia vittata Domingos Martins)

Lisa Vinzant 所有のDomingos Martins 2007年前後の写真 提供 Lisa
Lisa Vinzant 所有のDomingos Martins 2007年前後の写真 提供 Lisa

 今回は自分の持っているドミンゴス・マルティンスの由来をハッキリさせるべく、リサ・ビンザントに話を伺いました。なぜリサに話を聞いたかというと、私の購入先の方が仕入れたのはリサからだと見当をつけたからです(後日、私の購入先に問い合わせたところ、ネームプレートに間違いがなければアメリカ本土だと回答をいただきました。リサからも仕入れているということですが、私の株は違ったようです)

 ビルベルギアを好きな人にとっては、リサ・ビンザント(Lisa Vinzant)というとハワイの育種家で、ビルベルギアダースベイダーを代表とする沢山の交配種を生み出した事で有名です。しかも、その他にも大変美しくクオリティーの高い交配種を生み出しています。そして、その交配の親にはドミンゴス・マルティンスが使われています。私は以前からそのリサが親株に使ったドミンゴス・マルティンスはいったいどこからやって来たのか興味がありました。

 余談ですが、その他にビルベルギアの交配種の育種家で有名なのはJim Irvin Bob Spivey です。また現在はオーストラリアにとても美しいビルベルギアを生み出す育種家が多数います。オーストラリアのビルベルギアについては現在進行形でしかも登録されていない株が沢山存在します。そして、やはり優秀な交配種の系統にはドミンゴス・マルティンスが入っています。もちろんその全ての始まりはドン・ビードルです。


ドミンゴス・マルティンスとの出会い

1996年当時のドン・ビードルの展示写真

1996年当時のドン・ビードルの展示写真

リサの手に入れたドミンゴス・マルティンスが初めての開花した様子


 1996年にフロリダのオーランドで行われた国際ブロメリア会議(The World Bromeliad Conference)でドン・ビードルはドミンゴス・マルティンスを売っていました。リサはそこで初めてドミンゴス・マルティンスを見ました。ドン・ビードルはそこで音楽を流しながら非常に美しい写真を使ったスライドでプレゼンテーションを行ったそうです。それから程なくハワイブロメリア協会会議(Hawaii Bromeliad Society meeting)にもドン・ビードルはやってきます。正確には覚えていないそうですが、彼女はそのどちらかでドミンゴス・マルティンスを手に入れたそうです。

ドミンゴス・マルティンスの実生について

 ドン・ビードルや滝沢会長も話すように、ドミンゴス・マルティンスは成長が遅く増えにくい品種です。リサがドンから聞いた話によると、売るための子株が増えるまでに8年かかったそうです。そして、リサもまた同じこと話します。
 ドミンゴス・マルティンスは自家受粉をしにくいようですが、リサは自家受粉に成功します。はじめはこれで、成長が遅く増えにくいドミンゴス・マルティンスのような美しい株を、効率良く増やすことができると思ったそうですが、実際に採れた種から育ててみるとオリジナルのドミンゴス・マルティンスのような深い色の美しい株が育つことはなかったそうです。

 この自家受粉で取れた種から増えたドミンゴス・マルティンスは親とは違う株になります。根元から子株が出て増殖したもののみが、親と同一の株になります。交配の話は少し面倒ですが、例えばABの子供は全て違う種類になります。要するにABの交配から100株の子供が生まれたとしたら、それは全て同一ではなく100種類の違った株ということです。もちろん親とも違うわけです。通常はその中から特徴的な株を選別して良い株だけ名前をつけるようです。このようなことから、自家受粉で実生された株はドミンゴス・マルティンスと呼ぶことはできません。
 しかし、リサはこれらの自家受粉の株ひとつひとつに名前をつけることはなく、それらの株は全て「ドミンゴス・マルティンスF2」と呼んでいます(ただこのあたりは私は詳しいことはわからないのですが、生物学的には反対する人もいるようです。交配種であればF2と呼んでも良いそうですが、自然から採取されたドミンゴス・マルティンスのような品種の実生はF2とは言わなという意見もあります)。リサの考えでは、「ドミンゴス・マルティンスF2」もひとつひとつ名前を与えることは可能かもしれないけれど、それは単に混乱を招くだけで名前をつけることに価値があるとは思えないということです。こう言った理由で、自家受粉で実生されたドミンゴス・マルティンスの株は全て一まとめに「ドミンゴス・マルティンスF2」と呼んでいるそうです。


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 先にも書いたように、リサは実生からはオリジナルを超えるような美しい株を得ることはできなかったと言います。このことから彼女は交配の親にはドン・ビードルのオリジナルクローンだけを使いました。

リサはドミンゴス・マルティンスについてこのように話しました。

I agree it is one of the best Billbergias, both for breeding and as a species.  I was very excited the first time I saw it.  


 今回は私のドミンゴス・マルティンスの由来を知ることはできませんでしたが、幸運なことにリサ・ビンザント本人とメールのやり取りでお話を伺うことができました。恥ずかしながら白状いたしますが、私は英語ができません(苦手というレベルは超えています)。インターネットの翻訳サイトを使って注意深く翻訳しながらやり取りをしました。おそらくちぐはぐなで訳のわからないメールを書いたと思いますが、気さくに返事をいただき、いくつかの写真まで送っていただきました。私はリサが所有するドミンゴス・マルティンスの現在の写真を見せてほしいと頼んだのですが、現在は見た目がよくないので見せたくないとのことでした。その代わりに10年ほど前の別の写真を送ってくれました。それがはじめの2枚になります。またブログでシェアすることも了承していただきとても感謝しています。





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